

会期
2026年9月3日(木) - 20日(日)
営業時間
12:00 - 19:00
休廊日
月曜
会場
みんなのギャラリー
(東京都台東区東上野4-14-3 2F)
入場料
無料
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どこでもない、いまここにある景色
みんなのギャラリーはこの度、美術作家・奥天昌樹による個展「nowhere」を開催します。絵具を幾重にも重ね、制作過程そのものを画面に刻み込む奥天は、これまで特定のイメージに依拠しない絵画表現を探求してきました。
本展では、新作を中心に、近年の作品を交えることでその延長線を引き、「景色」という新たな視点から構成された空間を作り出します。
奥天の絵画が切り開く新たな展開をぜひ会場でご覧ください。


奥天昌樹 Masaki Okuten
2012年武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻卒業。
線の成り立ちや集合的無意識など原初的なテーマで絵画、インスタレーション表現を用いて、芸術が人々にもたらす事象の探求をしている。人々が抽象画に意味を見出そうとする習慣そのものを揺さぶり、ミニマルで意味化されていない痕跡に、新しい価値や意味を見いだすことを試みている。
近年の主な展示に、GINZA SIX 蔦屋書店、代官山 蔦屋書店、Gallery10 TOHでの個展、J12 contemporary art by Jason(香港)、Gallery Etherでのグループ展など。GEISAI#18ホルベイン賞(2013)、第3回Dアートビエンナーレ優秀賞(2014)、viaart2009 KURATA賞(2009)を受賞。


目的地はどこでもない場所
文:田森葉一(みんなのギャラリー)
関東の古い寺院を巡るリサーチに出かけたときに、思いがけず出会った景色がある。
以前は田畑だったと思われる、放棄された土地。目の前は一段低い土地が広がり、その先には雑木林が見えた。グーグルマップは私に、目的地に到着したことを告げていたが、眼前の土地には背の高い草が辺り一面に生い茂り、その先へ進めそうもない。そこが目的地だとは思えなかったが、もしかすると目的地だったのかもしれない。結局、それすら分からないままその場を後にした。
奥天昌樹の近作を見ていて、私はこの景色を思い出した。
「nowhere」と題した個展に向けて制作された一連の絵画には、どこか「到着できない」感覚があった。


奥天の絵画は、何層もの絵具が複雑に折り重なってできている。 最後に現れた線は、最初に置かれた線であり、一番手前に見える層は、一番奥の層である。私はこの画面を見ながら、将棋の盤面を想像する。一手を指すたびに、盤面は新たな局面へと開かれていく。例えば、序盤に指した一手が、終盤になって初めて意味を持つことがある。
奥天の制作もまた、色を置くたびに、一本線を引くたびに、その時々の画面の状態に応答しながら進められていく。予め想定された完成形へ向かうのではなく、画面との対話を積み重ね、その結果が作品となる。
そうした即興性からして、奥天は特定の何か、具体的な何かを描こうとしているわけではない。その一方で、結果として現れた画面に何らかのイメージを見出すことは鑑賞の自然な働きであり、それは作家自身も避けられないこととして受け入れてきた。しかし今回は、最初に「景色」という前提が置かれている。
nowhereとは、どこでもない場所であると同時に、now here「いま、ここ」とも読める言葉だ。現在地はここだということが示されていながら、ここがどこなのかは明らかになることがない。あの放棄された土地もそうだった。地図は目的地の到着を告げていた。しかし私には、そこがどこなのか最後まで分からなかった。


今展で奥天の作品に現れる景色は、どこでもない、今ここの景色である。
その場所がどこであるかは特定されていない。しかし、それが「現在地」として私たちの前にあるとき、私たちは作家と同じ条件に立つことになる。奥天が制作のなかで向き合っていた現在地に、今度は私たちが立つ。どこでもない、現在地へと。








